私が村上春樹にのめり込んだのは2000年で、
それは入院中の病棟ベッドの中で読んだ
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」。

1980年代初頭の若者達は抑えるべきトレンドとして
彼の著作を追いかけていたので
それに乗り遅れないようにと、
主な春樹作品は20代後半から30代に読んだけど、
それは多くの作家の中の一人だった。

しかしこの「世界の~」は
先が見えない術前化学療法
(腫瘍が大きいといきなり手術は出来ない)を、
41歳当時の自分は完全入院という形で受けたので、
その半年の缶詰状態という環境で読んだ。

たまたま入院荷物の中に入れていただけだけど、
出口のない「世界の終り」に迷い込む主人公と
自分を重ね合わせ、
「これは私のために書かれたものだ」
と真剣に思って繰り返し読み、
最終的には文章のいくつかを覚えようしたり。
(この辺のことは→ こちら )

さてそんな春樹ファン待望の
(私はハルキストとまでは及ばず)
新作「夏帆」はすぐに買い求め、
先月のお盆期間に読んだが
驚くべきシンクロニシティがあり、慄いた。

20260816_152907(1)

とはいえ春樹作品を
読んだことのない人には?だろうし、
今日の内容は眠っている時に見る
夢の話みたいなものなので、
これで読むのを終わりにしてもらって全然OK。

それにネタバレも少しあるので
これから読む人はここでやめてね。

と、断りを入れたので後はノビノビと長々と。
(笑)

~~~~~★~~~~~

年々小説を読む人は少なくなっているのに、
村上作品は新作が出ると、
世界各国の読者は
文化も言語も宗教も異なるのに、
注目が集まるのはすごいことと思っている。

その魅力の一つは、多くの読者が
(そこには私も入るのだけど)
「ここにはまるで自分のことが書いてある」
と感じることだ、と誰かが書いていたように思う。

今回の作品は私にとってその度合いが過去イチ。

8a903abf-s

まず自慢(?)したいのは、
主人公が住む町に自分が住んでいること!
(正確には駅だけど。
 主人公は駅の東口に住み、私は西口に)
東京の北東のはずれ、隣の駅から埼玉県、
というマイナーな「竹ノ塚駅」は
これで世界中のハルキストの知るところに。

0a43f7ddc4de4913d95477454686eb37-900x600

ここを春樹さんが選んだ理由は
(後でもう一つ書くけど)
憶測だけど地下鉄サリン事件について
彼が深く取材をしたからだろう。

ここにあの世間を騒がせた
新興宗教の拠点があったというか、
今でも残党の団体の建物があるのだ。
だから町内会の回覧版には時々だけど
「オーム情報」という紙が今も挟まれてくる。

また主人公の夏帆(かほ)の父は
町医者でうちもそう。
(うちの父は他界したけど)

そして夏帆は体育が大嫌い。
体育の時間が「地獄だった」で、
まさに私も。

まぁ、この3つの一致でファンとしては
興奮してしまうのだけど、
そうでない人から見れば
「そういうこともあるでしょ」レベルだろう。

でも更に驚くべき意味ある偶然が!

それは冒頭で主人公はお見合いをするのだが、
そのお相手の名が佐原(さはら)さんという男性で、
空虚で暴力的な存在として描かれている。
それを私は「やだな」と思った。
だって、私の上(うえ)というか、
ハイヤーマインド(セルフ?)というか、
守護天使の名が佐原(さはら)だから。

これは26年前のがん治療の末に
(今、気づいたけど、26は主人公、夏帆の歳だ)
38キロに痩せてフラフラで退院し、
ぼ~っとしていたある日のこと。
突然おじいさんのようなしわがれ声で
(姿は見えないけど)
「佐原(さはら)と申す、
 以後、よろしくじゃ。
 サハラ砂漠から来たんでの。
 上から守ってやっとるから、
 どこぞのわからん奴にぼったくられて
 わしの名前など、
 つけてもらわんで、よろしっ!」

と話しかけて来たのだ。

そのおじいさんみたいなのと、
しばらくは交信(?)出来たけど、
私の体力と意識がシャンとしてきたら
出来なくなって今に至るのだ。
(念のためだけど
 私は宗教とかなんもやってない)

「佐原」という苗字は私にはそんな存在の名。
物語の佐原さんは夏帆に失礼なことを言ったり、
大型バイクを好んで乗り、
彼女の家の周りを夜中に排気音を響かせたりする。
「もうちょっとよいキャラクターならいいのに」
と思いながら読み進めていたら・・・!!

物語の後半で佐原さんは私の上と同じく
サハラ砂漠からのサハラで
主人公の「守護天使だ」と名乗るのではないの!

一足先に小説を読み終えたるりこさんと
このことを共有したら、
彼女は
「だから携帯のアドレスがサハラなのね~、
 不思議だったんだ」と。
これはガラケー時代の私のアドレスで
今は殆ど使ってないけど、
とにかくそうなので、
後出しじゃんけんじゃなく、
携帯アドレスとして残っている名前。

~~~~~★~~~~~

ところで今回の物語も春樹ワールドさく裂で
異界からのキャラクターが沢山登場するが、
あえて一括りにすると、
それらは上記の佐原さんも含め、
善悪が「絡み合っている」。

この「絡み合っている」は
今までも彼の小説の重要なコンセプトだし、
今の時代を読み解くキーワードだとも思う。

というのもこの前観た「ちいかわ」も
映画「急に具合が悪くなる」も
演劇「プライマ・フェイシ―」も、
境界線がない物語だった。

(↓映画「急に~」では
  介護者と認知症の入所者が
  こんなふうにワークショップで絡み合うシーンが)

20260806_163520(1)


きっと現実もそうではないかな?

~~~~~★~~~~~

ということで
この「絡み合っている」についてが
書いておきたいことの2つ目。
(って、まだまだある:汗)、

20数年前の春樹氏への読売新聞の
インタビュー記事にそれが書いてある。
下記はそのスクラップ。
↓

20260806_163701(1)

↑
ネット検索したけど
記事は見つけられずなのでレアものかも?


内容は寒い冬のある日、

飼っていた数匹の猫が重なって寝ている姿から、

「良き小説の基準」について春樹氏は語っている。
↓


どこまでが人間で、

どこまでが動物か

わからなくなってしまうような小説。


どこまでが自分の温かみで、

どこからが他の誰かの温かみなのか、

区別できなくなってしまうような小説。

この記事からおよそ20数年が経って、
ますます色んなことが
「絡み合っている」時代だと思う。

20260806_163722(1)

それは例えば善と悪、正と誤、
生者と死者、被害者と加害者、
正常と異常、病気と健康、
この世とあの世、夢と現実、等など、

今回の新作は色んなことや人が
絡み合いまくっていた。

~~~~~★~~~~~

最後にもう一つ。

この新作で隠れキーワードと思うのは
「境」。

冒頭に書いたように
主人公の住んでいた竹ノ塚は
東京の一番はずれ、埼玉県との県境。

そして彼女がほどなくして引っ越す先は
「武蔵境」と境がつく駅名。
昔は幕府のあるお江戸と
武蔵の国の境だったのでは?

これ以外にも現実と幻想の境界、
異界へと通じる境界線の行き来、
主人公と母との心理の境界が展開していく。

私はどこも行かない夏だったけど、
魂の旅行のような読書体験だった。

20260816_152800(1)


で、長々書いたことを一言にすると、
(って、これだけでよいんだけどね:苦笑)
↓

これは私だけのために書かれ、
時代を超え、空間を超えて、
作者から私宛てに今届いたメッセージ。


という幸福でおめでたい錯覚こそが
文学的感動
で
今の私はみみっちい旅行をするくらいなら、
こっちのほうがずっと幸せ。


【補記】
(1)9/1付でHP更新→ こちら
   (↑2025年の秋にHPのURLが変わりました)

(2)
毎月1日配信の一言メルマガ
   『ONEパラダイム』を9/1発行

   今月号は「コーンスープ現象」
   ↑
   会ったこともない人のブログやSNSに
   シニカルな批評を書き込む人が
   増えている昨今。

   それはこのコーンスープの話に喩えられる、
   という最近出て来た言葉

   
バックナンバーは無いのですが
  (1)のHPでその月だけ確認いただけます。

  読者登録は→こちら

(3)認定トレーナーの開講日程 を8/26付で更新
   → こちら 

(4)この内容とはまた違う観点で綴る
   アメブロ「ワンセルフカードの広場」
   → こちら

(5)古い個人ブログはmixiで読めます。
   ご興味あったら
→ こちら